同居親族のみの経営
同居の親族は労働者として扱われません。
同居(世帯が同じで、生活を共にしていること)の家族だけで経営している企業には、労働基準法は適用されません。
親族であっても同居されていない場合は、労働基準法が適用されます。
同居の親族以外の方が入社されることで、労働基準法の適用事務所となったとしても、同居の親族は労働者として扱われません。 ※以下例外があります
※ 同居の親族が、事業主の指揮命令にしたがって業務をおこなっていること。
※ 同居の親族以外の他の労働者と同様の就業内容であり、賃金もこれに応じて支払われていること。
労働基準法が適用されないということは?労災保険の適用を受けられません。
業務上の病気や怪我については健康保険も使えないので、全額自費負担となります。代わりに民間の保険で対応するしかありません。
法人で社会保険に加入している人数が4人以下の場合には、業務上の病気や怪我でも健康保険が使えます。
同居家族であっても労災保険が適用となる例
※ 同居の親族の他に一般従業員がいる場合。
※ 就労実態及び労働時間などが他の従業員と同様であり、賃金もそれに応じて支払われていること。
※ 事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。
雇用保険には加入出来ません。
労働基準法が適用されないということは?雇用保険に加入出来ません。
雇用保険で同居親族の加入が認められる場合
※ 事業主の指揮命令に従って業務を行っていることが明確であること。
※ 就業の実態がその事業所で働く他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。
※ 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等・賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期等について、就業規則などに定められ、その管理も他の労働者と同様になされていること。
※ 事業主と利益をひとつにする地位(取締役等)ではないこと。
常時10人未満の労働者を使用する事業場
「就業規則」の作成と所轄労働基準監督署への届け出は、労働基準法「常時10人以上の労働者を使用する事業場」で義務付けられており、労働者が10人未満の事業場はその対象とはなっていませんが、労働条件や職場で守るべき規律などをめぐる事業主と労働者との間の無用の争いごとを未然に防ぎ、明るい職場作りに寄与するという就業規則の役割から考えて、ぜひとも作成しておきたいものです。
常時10人以上の労働者を使用する事業場 就業規則の作成と届出が必要です!
「常時10人以上の労働者を使用」とは?
雇用形態(正規・非正規)に関係なく、雇用(所属)している労働者が常時10人以上いることです。出勤している人数ではありません。
「常時」とは?
繁忙期のみアルバイトを雇い入れその期間だけ10人を超えるが、それを過ぎれば10人未満になるような場合は「常時」とはなりません。
「事業場」とは?
本社事務所やSS、配送所などのことです。よってこうした拠点ごとに常時10人以上の労働者を使用しているかが条件となり、すべての拠点が該当しているならば、それぞれで就業規則の作成と届出が必要となります。
「労働者」とは?
労働者とは、正社員のほか、パートタイム労働者やアルバイト等、自社と雇用契約を結ぶすべての者を含みます。
ただし、派遣労働者は、派遣先の労働者には含まれません。
「就業規則」
「就業規則」のひな形は、「厚生労働省ホームページ」のこちらからダウンロードが可能ですが、様々な業態を想定した「モデル就業規則」であるため膨大なものになっています。
自社の各事業場の実情に応じた「就業規則」の作成は、社会保険労務士など専門家に依頼することをお勧めします。
新規採用
募集
求人票に記載すべき項目・・・以下の6項目を記載しなければならない法律上の必要性はありませんが、求職者にとっては必要な情報です。やむなく求人票に記載できなく場合は面接の際に提示するなどしましょう。
- 労働者の業務内容
- 労働契約の期間
- 就業する場所
- 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間と休日
- 賃金(賞与などについては別途規定あり)
- 健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用有無など
『募集段階の留意点』
求人票に記載が禁止されている事項(男女雇用機会均等法、改正雇用対策法)
- 性別を限定するような表現
- 年齢を限定するような表現(一部、例外あり)
- 最低賃金以下の給与
2018(平成30)年1月1日に「職業安定法」が改正され、労働者の募集や求人申し込みのの制度が変わっています。下記のリンク先をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000171017_1.pdf
高齢者
高年齢者雇用に対しては事業主が利用できる支援策があります。下記のリンク先をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page09.html
外国人
SSでの就労が可能な外国人には以下のカテゴリーがあります。
- 身分に基づき在留する者・・・「定住者」(主に日系人)、「永住者」、「日本人の配偶者等」等
→これらの在留資格は在留中の活動に制限がないため、様々な分野で報酬を受ける活動が可能。 - 資格外活動(留学・家族滞在)・・・これらの在留資格者が在留中に就業するためには「資格外活動許可」が必要となり、就労時間の制限があります。
留学→学期中に働けるのは週28時間までです。ただし、夏休みなどの長期休業中は一日8時間、週に40時間(労働基準法の規制を受けるため)となります。
家族滞在→年間を通して週28時間以内となります。
※ 外国人雇用の注意点
以下のような雇用を行なった場合、雇用主が「不法就労助長罪」に問われますので注意が必要です。この場合、入管法第73条の2第1項の罪により、3年以下の懲役又は300万以下の罰金に処せられます。
- 資格外活動許可を有していない留学生の雇用
- 制限されている時間を超えての就業
採用に際して、「資格外活動許可」を有しているかどうか、「他のバイトと掛け持ち」していないかを確認する必要があります。
掛け持ちしている場合は、知らぬ間に制限を超えて働かせてしまう可能性がありますので、特に注意が必要です。
面接
面接の際に提出してもらう書類
履歴書、職務経歴書、健康診断書
採用
『採用時に提出してもらう書類』
住民票記載事項証明書
※ 採用時に現住所や生年月日を確認するための書類
※ 行政指導により「住民票」や「戸籍謄本」「戸籍抄本」などの戸籍に関する書類を提出させることはできません。
※ 満18歳未満の年少者は、年齢を証明する書類を事業場に備えつけることが労基法第57条により義務づけられています。
身元保証書
※ 身元保証書は、採用した社員の行為で会社が損害を受けた場合、本人に弁済能力がない、または不足する場合に、本人に代わって身元保証人が会社に対して損害賠償するという「保証人と経営者」の問で取り交わす契約の書面です。
※ 身元保証書には原則3年間の有効期間があります。書面に5年間とすれば5年間有効となりますが、どちらの場合も自動更新は出来ません。
マイナンバー
労働条件通知書兼雇用契約書
給与振込先届出書
各種手当支給届出書
健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者資格取得等届(本人に扶養家族がいる場合)
『中途採用の場合』上記以外に以下が必要
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票(入社した年に前職がある場合)
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
社会保険の加入条件と手続き
加入義務のある事業者
手続き
加入対象となる従業員
税金関係(税務署)の手続き
所得税の徴収手続きと納付期限
住民税の徴収手続きと納付期限
法定三帳簿
労働者名簿
賃金台帳
出勤簿
不採用
不採用通知の方法など
雇用継続
働き方改革が推進される現在、長く就業している従業員であっても、新しい知識を得ることでより良い働く環境を求める意識は高まっています。
働き方の多様性が広く考えられるようになった今、労働条件は賃金だけではなく労働環境も含めた条件として考えられるようになってきています。
雇用継続のポイントは、それぞれの企業、事業場が働き方改革という新しい波に乗っていけるが重要となっています。働き方改革は人材活用の最重要項目としてそれぞれのポイントを確認していきましょう。
『就業規則』
「就業規則」のひな形は、「厚生労働省ホームページ」のこちらからダウンロードが可能ですが、様々な業態を想定した「モデル就業規則」であるため膨大なものになっています。
自社の各事業場の実情に応じた「就業規則」の作成は、社会保険労務士など専門家に依頼することをお勧めします。
「雇用契約書と労働条件通知書」
「言った、言わない」のトラブルを避けるため、最近では、「雇用契約書」に「労働条件通知書」の内容を盛り込んで、使用者、労働者双方の署名・押印をして、「労働条件通知書兼雇用契約書」としています。
こうすることで、労働者と使用者の合意のもと雇用契約を締結したことが明確にでき、かつ、労働基準法上の労働条件の明示義務も果たすこともできるのです。
「正規雇用向け」と「非正規雇用向け」のひな形を作りました。こちらからダウンロードが可能です。
「法定労働時間と時間外労働・36協定について」
石油組合が先に行なった調査でも、「時間外労働」を行なっているSSが多くありました。しかし、法律で決められたものへの対応の差が大きくありました。
この機会にいま一度確認しましょう。
従業員の残業のために会社が行なわなければないこと
①法定労働時間・法定休日と特例措置の把握(これを超えた労働が時間外労働)

※特例措置の適応条件
- 常時使用する労働者が10 人未満のSS(事業場)であること
- 就業規則や雇用契約書に週44時間となることを明記すること(労使間の同意)
- 「変形労働時間制」を使う場合は、労使協定の締結と届出が必要
- 対象となる労働者は正規・非正規を問わないが、18歳未満の労働者は適用外
②法定労働時間・法定休日を越えない運用例

③変形時間労働制とは
変形労働時間制は、繁忙期と閑散期があるSSの場合、その時期に合わせて労働時間を調整できるというものです。
繁忙期にはやるべき仕事が積み重なり、勤務が1 日8 時間を超えてしまうこともあるでしょう。そんなとき、変形労働時間制を取り入れていれば、法定労働時間を月単位(1年単位1週間単位などありますが、SSでは月単位での運用がおススメです)などで調整することで、勤務時間が増加しても時間外労働として扱わなくてもよくなります。
※労働者のメリット
変形労働時間制が設定された目的は、多様な働き方に対応することです。一定時間内で漫然と仕事をするのではなく、仕事の状況に応じて働く時間を調整することで、業務の効率化や余暇の有効活用につながることが出来るでしょう。
※変形労働時間制導入の手続き(1か月単位の場合)
変形労働時間制を導入するにあたっては、労使協定または就業規則にその旨を規定しなければなりません。定める事項は次の項目になります。
- 対象となる労働者の範囲
- 変形期間
- 変形期間の起算日
- 変形期間を平均して、1週間あたりの労働時間が週の法定労働時間を超えないこと
- 変形期間での各日・各週の労働時間
- 各労働日の始業・終業時間
- 有効期間(労使協定の場合のみ)
労使協定で定めた場合は、協定を更新するたびに労働基準監督署へ届出が必要になります。一方、就業規則で定めた場合は、常時10人以上の従業員を使用する会社は労働基準監督署への届出が義務付けられているので、この制度を定めるかどうかに関わらず届け出が必要です。
④時間外労働とは
以上で解説した「特例措置」、「変形労働時間制」でも収まり切れない労働時間が発生してしまう場合には「時間外労働」となり、賃金の割り増しが必要となります。

※法定時間外とは各事業場で取り決めた所定労働時間に休憩の1 時間を加えた時間帯以外の時間帯のことです。
※深夜時間とは原則22時~5時です。交代制の場合には,行政官庁の許可があれば,16歳以上の男性に限り,22時30分まで,または5時30分から労働させることが出来ます。
労働者が「時間外労働」を行なうためには、労使間により時間外労働の上限時間などを「36(サブロク)協定」で締結し、所轄の労働基準監督署長あてに届け出をしなくてはなりません。
⑤36(サブロク)協定の内容
「36協定」とは労働基準法第36条によって定められた、「時間外・休日労働に関する協定届」をいい、中小企業においては2020年4月よりルールが大きく変わっています。
時間外労働の上限

※特別条項とは
- 特別条項で時間外労働の上限時間を延長する回数は、年6 回までです。あくまでも繁忙期や緊急時を乗り切るための例外です。
- “何となく忙しくなりそう” といった場合には特別条項を利用することは認められません。
- 具体的な理由を明確にし、「特別条項付きの36 協定」を締結する必要があります。
「36協定」の詳細と届出の様式は厚生労働省のサイトをご参照ください。
年次有給休暇
1.付与の条件
①雇い入れの日から継続して6ヵ月雇われていること
②①の期間の全労働日の8割以上出勤していること
2.付与の対象
正社員、パート、アルバイトすべての労働者
3.付与のタイミング
- 年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることとされていますので、労働者が具体的な月日を指定した場合には、その日に年次有給休暇を与える必要があります。
- ただし、その時季に年次有給休暇を取得することにより事業の正常な運営を妨げる場合(同じ期間に多くの労働者が請求した場合など)には、他の時期に変更することが出来ます。
4.付与の日数
①フルタイムの労働者の場合

②パートタイム(週4日以下)の労働者の場合

5.年次有給休暇の取得(消化)
労働基準法改正により2019年4月から、全ての使用者に対して「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられています。
また以下のような罰則規定がありますのでご注意ください。
- 使用者が、条件を満たす対象者に対して年に5日の有給休暇を取得させない場合は、「30万円以下の罰金」が科されます。
- 罰金は従業員1人につき1罪です、従業員3名が年に5日を取得できなかった場合は、最大で90万円の罰金になります。
- その他、従業員から請求された時季に有給休暇を与えなかった場合、就業規則で定めていなかった場合なども、労働基準監督署の指導や是正勧告がされ、改善されない際には罰則が適用されることとなります。
6.繰越
付与された年次有給休暇が年度内に取得(消化)出来なかった場合には、翌年までに限り下表の要領で繰越しが出来ます(付与から2年で時効ということです)。

7.計画的付与制度を活用して取得促進を!
①年次有給休暇の「計画的付与」とは
付与された年次有給休暇の日数のうち最低5日を残した残りの日数を計画的に取得する制度です。その方法には以下の3つのパターンがあります。
(ア)会社や事業場全体の休業による一斉付与
(イ)班、グループ別の交替制付与
(ウ)計画表を使った個人別付与
SSではこれらの中では、(ウ)「計画表を使った個人別付与」の方式が馴染むのではないでしょうか。
SSの実態としてすでにこの方式を活用して夏季休暇などに年次有給休暇をあてるケースが多いのではと思います。更に誕生日や結婚記念日など従業員の個人的な記念日などを優先的に充てるなども検討されたら宜しいかと思います。
取得促進の好事例として、「アニバーサリー休暇」として記念日を含む3日連続の休暇や「スポーツデー」として、体に良いことをする自由な日を年間3日決めるなどがあります。
②年次有給休暇の「計画的付与制度」導入の必要な事
(ア)就業規則により規定
(イ)労使協定の締結
・計画的付与の対象者
・対象となる年次休暇の日数
・計画的付与の具体的な方法
・その他
就業規則の改定、労使協定例などは、社会保険労務士等と各社、各事業場の実態応じてご相談されることをお勧めします。
同一労働同一賃金
同一企業における正規雇用労働者 と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
「不合理な待遇差の解消」とは「合理的な待遇差は認められる」ということです。
自社やSSに具体的な「不合理な待遇差」があるかの判定は下図の手順で行ないます。

ありがちなトラブル
近年、労務に関する三大トラブルは、「解雇・労働条件・ハラスメント」となっています。この三大トラブルについて、順を追って説明していきましょう。
解雇に関するトラブル
「解雇」とは、従業員の同意なく、会社(使用者)側からの一方的な通知により雇用契約を終了させることをいいます。
会社を経営していれば、問題社員に会社を辞めて頂きたい状況となることがあるでしょう。しかし従業員は法律により守られており、「不当解雇である」と主張し会社に裁判を起こしてくる不当解雇トラブルのリスクを伴います。
そのリスクを最低限に抑える事は、会社にとっても重要な事柄です。まずは、会社を辞めて頂きたい即「解雇」とならないような手順を踏むことが重要かと思います。
1. 解雇の前に「退職勧奨」を行う
「退職勧奨」とは、会社側から問題社員に対し、退職に向けて説得し、合意により雇用契約を終了することを目指すことを言います。「退職勧奨」は円満解決の手段の1 つです。しかし、問題社員である労働者にとって「退職勧奨」は「解雇」との区別があいまいで、「退職強要」とうつることも多く、裁判で、会社側に慰謝料等の支払いを命じられることもあるので、「退職勧奨」をする際には、特定社会保険労務士や弁護士に相談されることをお勧めします。
2. 不当解雇となるリスクを対策する
「退職勧奨」をしても従業員が退職に応じない場合は、解雇せざるを得ません。しかし、解雇すると決めた場合であっても、事前に不当解雇となるリスクに ついて検討し、可能な対策をしておくことが必要です。
仮に「訴えられたら不当解雇と判断されることが確実」という場合は、解雇するべきではないと言えるでしょう。
3.「普通解雇」か「懲戒解雇」か
解雇はその理由に応じて「普通解雇」と「懲戒解雇」の2 種類があり、「解雇方法」が変わってきます。
(1)普通解雇
普通解雇とするべき具体例
・病気やけがによる欠勤
・能力不足、成績不良
・協調性の欠如
・経営難による人員整理
(2)懲戒解雇
懲戒解雇とするべき具体例
・横領など業務に関する不正行為
・転勤の拒否など重要な業務命令に対する違反
・無断欠勤
・セクハラ、パワハラ等のハラスメント行為
・経歴詐称
ただし、懲戒解雇は、「就業規則に書かれている懲戒解雇事由に該当しない限り適用できないこと」に注意しておく必要があります。
就業規則の懲戒解雇事由にあたらないときは、懲戒解雇はできません。
4.「 予告解雇」か「即日解雇」か
普通解雇か懲戒解雇かを決めたら、次に「予告解雇」か「即日解雇」かの解雇方法を決める必要があります。
(1)予告解雇
会社は、原則として解雇日の30 日前までに解雇を予告することが必要です。この「解雇予告」は、「解雇予告通知書」をもって行ないます。
(2)即日解雇
30 日分の賃金を支払えば、事前の予告をしていなくてもその日に解雇することができます。このルールにより、解雇を事前に予告せず、解雇を伝えた当日に解雇するのが「即日解雇」です。このときに支払うことになる30 日分の賃金のことを「解雇予告手当」といいます。
このように即日解雇と予告解雇という2種類の解雇方法のいずれかを選択することになりますが、結論としては「特別な事情がない限り即日解雇が望ましい」です。なぜなら、予告解雇は予告からの30 日間在籍するため、他の従業員への悪影響や情報の漏洩のリスクが考えられるからです。また予告解雇で「解雇予告手当」分を支払わずに済むと考えても、有給休暇を取得されてしまえば意味がないことになるからです。
5. パート、アルバイトの解雇について
パート、アルバイトでも雇用契約が無期(記載が無い場合も含む)の場合、正社員同様上記の通りとなりますが、有期の雇用契約となっている場合は、法律により、雇用契約の期間中の解雇は原則として「やむを得ない事由がある場合でなければ解雇することができない。」となっています。
この「やむを得ない事由」にあたるかどうかは、ケースごとの判断になりますが、基本的に懲戒解雇にあたるようなケース(金銭の横領やセクハラ、パワハラ行為などを理由とする解雇)以外は、雇用契約期間中の解雇はできないと考えておくべきでしょう。
そのため、普通解雇となる成績不良や協調性欠如のケースでは、雇用契約期間中は解雇せず、雇用契約の期間が終了する段階で次回の更新をしないことにより、パート社員、アルバイト社員を退職させることが適切です。
労働条件に関するトラブル
労働条件に関するトラブル、すなわち労働条件の引き下げです。労働条件は、「労働条件通知書」で明示することが義務付けられており、このサイトでも「労働条件通知書兼雇用契約書」の利用をおススメしています。内容の詳細はこちらをご参照ください。
「労働条件通知書」で明示していても、その内容(労働条件)の変更の際にトラブルとなるケースが少なくないのでその事例を紹介しましょう。
1. 賃金に関する事
様々な情勢で会社経営が苦しくなり、賃金のダウンや手当のカットなど人件費の削減を余儀なくされる場合もあるでしょう。そうした際に大きなポイントになるのが、労働条件の変更を行う合理的な理由や根拠が示されているかどうかです。
一般的に企業の状況が思わしくないことや赤字であることだけでは充分ではないのです。
この変更を加えなければ会社運営そのものが危機に瀕するとか、大きな支障が生じることなどが具体的に説明され、改善のための手立て、努力がなされていることが条件となります。その他の手当てなども労働条件の一部ですので同様の扱いと考えます。
「会社側の理由,根拠が充分に説明されていない」、「会社側からの一方的な通告=本人の承認なし」などは、労基法に違反しており、無効となります。賃金規定の見直しも,明らかに賃金の大幅な引き下げを結果するものであれば違法であり、本人の同意がない限り無効となるでしょう。
こうした明らかに違法となる場合以外にもトラブルとなるケースがあり、その多くは、賃金の減給に関するもので、一方的に引き下げられた、極端に引き下げられた、などとトラブルに発展する場合があります。
賃金の減給は前述した経営上の都合などによる賃金の引き下げとは異なり、懲戒処分や人事考課の結果などによるものです。
賃金の減給は労働基準法第91条で(以下、法第91条)懲戒処分として、減給額について規定※されています。
・減給1回の額が、平均賃金1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない
ただし、出勤停止や降格など、人事考課等による賃金、賞与額の低下は、査定の結果に過ぎないと判断され、上述の法第91条の適用は受けません。ただしその査定は違法性のないものということが条件となります。
また、労働者が遅刻、早退をした場合は、「賃金控除」として、実際に遅刻や早退した時間に相当する賃金分だけとなります。したがって、30分の遅刻に対し30分相当の賃金を控除することは認められますが、その分の減給は、法第91条の適用を受けません。また、5分の遅刻に対し30分相当の賃金を控除することは、賃金の全額払いの原則に反するため、許されません。
ただし、制裁として就業規則に明記されていれば、遅刻、早退の時間に対する賃金額を超える減給や、30分単位などに切り上げて減給を行うことは可能となり、法第91条の適用を受けます。
降格・降職については、「職務毎に異なった基準の賃金が支給されることになっている場合、職務替によって賃金支給額が減少しても、法第91条の減給制裁規定に抵触しない」とありますが、減少幅が大きくなった、役職に掛かる賃金が大きく、全体の10%以上の減額となった場合にトラブルとなった事例もあります。
降職・降格での賃金減額についても、賃金規程でしっかりと定めておく必要があります。
2. 労働時間に関する事
労働時間とは労働者が雇用側の指揮命令下に置かれている時間のことを指します。SSでいえば開店準備はもちろん、始業前の朝礼やミーティングも会社の指示で行なわれているものですから労働時間に含まれると考えましょう。時給で働く従業員はこうした点に非常にシビアであることを忘れてはなりません。こうした義務付けられているものに関して、賃金請求があった際は応じなければならない可能性があります。
3. 年次有給休暇に関する事
年次有給休暇に関するトラブルも少なくありません。SSの多くは人手不足のため、誰もが簡単に有給休暇を取得することは難しい状況です。しかし、労働者の年次有給休暇取得の権利は法律で定めれており、取得できない、または取得を妨害されるという場合には違法になります。年次有給休暇に関する詳細はこちらをご確認ください。
4. その他
休職や退職金、服務規程など就業規則に記載が無い、そもそも就業規則が無い場合などもトラブルの要因になりますので、そうした場合は早めに特定社会保険労務士や弁護士に相談されることをお勧めします。
ハラスメントに関するトラブル
トラブルが顕在化している、いじめや嫌がらせは様々なハラスメントによるものです。202 2 年4 月1 日から中小企業主にもパワーハラスメントの雇用管理上の措置義務が義務化されるため注意が必要です。
以下ハラスメントについて説明していきましょう。
1. パワーハラスメント
職場におけるパワーハラスメントの定義や類型(パターン)は、動画の中で解説していますのでご覧ください。
【定義】
・優越的な関係を背景とした言動
・業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
・労働者の就業環境が害されるもの
以上3つの要素を全て満たすものをいいます。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。この点についても、動画の中でもこの点について解説されています。
【類型】
・身体的な攻撃蹴る、殴る、物を投げつけるなど
・精神的な攻撃脅迫するような言動や人格を否定するような侮辱(性的指向・性自認に関する侮辱的な言動も含む)、名誉棄損に当たる言葉、ひどい暴言
・人間関係からの切り離し仕事から外す、別室への隔離・無視や仲間外しなど
・過大な要求業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
・過小な要求業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないこと
・個の侵害職場外での継続的は監視やライバシーに関する情報について、本人の了解を得ずに、他の労働者に暴露すること
2. セクシャルハラスメント
職場におけるセクシャルハラスメントの定義や類型(パターン)は、動画の中で解説していますのでご覧ください。
【定義】
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることで、同性に対するものも含まれます。
【類型】
(1)対価型
性的な言動に対して労働者が拒否や抵抗を示したことを受け、その労働者が解雇、降格、減給など、労働条件において不利益を受けること
(2)環境型
性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること
3. 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント
妊娠や出産に関するハラスメントは一般的に「マタニティハラスメント」と称されていますが、関連する男女雇用機会均等法では育児介護休業法として扱われますので、ここでは介護を含めた解説いたします。動画ではマタニティハラスメントについて解説していますのでご覧ください。
【定義】
妊娠・出産・子育・介護に対して嫌がらせを受けることで、女性、男性問わずそのハラスメントの対象となります。これらは法律で禁止されており、企業にはその防止措置が義務付けられています。
【類型】
(1)制度等の利用への嫌がらせ型
産前休業、育児や介護休業などの制度や措置の利用に関する言動により就業環境が害されるもの
(2)状態への嫌がらせ型妊娠したこと、出産したことなどに関する言動により就業環境が害されるもの
4. ハラスメント防止のために事業主が講ずべき措置
(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
(4)併せて講ずべき措置 (プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
(5)職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、その原因や背景となる要因を解消するための措置
5. 4に加え実施が「望ましい」とされている取組
(1)各種ハラスメントの一元的な相談体制の整備
(2)職場におけるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取組
(3)労働者や労働組合等の参画
その他注意点
レアケースだが大きな問題に発展するもの