雇用形態を知ろう
働き方改革の法制化が進むにつれ労働者の働き方も様々になっています。
以前でしたら、非正規よりも正規という考えが主流となっていましたが、今は正規・非正規の待遇差も改善されつつあり、フルタイム で働く正社員よりも非正規として自分の時間を有効活用し、自分らしい生き方を求めることも少なくありま せん。これから自分がどのように生きるか、生きたいかによっては、働く期間を定めた「契約社員」や働く 時間や曜日に自由度がある「パートタイマー」や「アルバイト」の方が都合が良いこともあるでしょう。ここで はそうした様々な働き方のメリット・デメリットを考えていきましょう。
雇用形態 契約社員/嘱託社員
定義
期間が定められている雇用契約
メリット
- 社会保険適用・・・契約社員にも、社会保険や福利厚生の一部など、正社員への待遇の一部が適用される。
- フルタイムの勤務も可能・・・希望する場合、契約条件によってフルタイムで働くことも可能。
- 自分のライフスタイルの合わせた働き方が可能・・・結婚・出産のほか期間を決めて将来の夢に向けて取り組んでいるなど、他にライフプランのある方には、契約期間が限定される働き方はメリット。
- 異動・転勤がない・・・正社員の場合、基本的に勤務地が限定されないため、異動や転勤の可能性がありますが、契約社員の場合は、雇用契約で勤務地が明記されていれば転勤はありません。契約社員が働く地域を限定している企業も多く、異動や転勤がないこともメリット。
- 自由な時間の確保・・・派遣社員や嘱託社員は総じて定時で帰りやすいことから、趣味や育児などプライベートと仕事の両立を目指したい人にとってメリット。
デメリット
- ボーナスや退職金がない・・・契約社員の場合、ボーナスや退職金などがない、または少ない会社が多い傾向があり。
- 年収差あり・・・長期的に見ると、正社員と比較した時の年収は大きく差が開く可能性あり。
- 契約満了時まで、昇給・昇格がない・・・契約社員の給与は、契約満了時までは雇用契約書に記載されている金額での支給。仮に業績を挙げたとしても、契約満了後に再び契約が更新されるまでは昇給しないのが一般的。
- 雇用の不安定・・・契約更新がなかったら事実上の解雇、失業となる。会社に残りたいと申し出ても、退職を余儀なくされる。
- 職責が限定的・・・これはメリットと捉えられる場合もあるが。仕事内容は、正社員と比べて「アシスタント」的な位置が多く、パートやアルバイトよりも責任のある仕事を任せられることがあるといっても、正社員のように重責となる仕事を任せられることは少ない。
そのため、キャリアを積みたい方にとっては物足りなく感じることもある。
パートタイマー 契約社員/嘱託社員
定義
勤務時間が正社員より短時間
メリット
- 限定した就業時間・・・多くのパートタイマーがメリットと捉えているのは、働く時間を選ぶことができ、自分(家庭)の時間を確保できること。
- 求人件数・・・正社員、契約社員と比べて、求人件数が多く、仕事を選べる。
- 働き方の自由度・・・時短、週4などの仕事が選べる。
- 未経験者OKの求人が多い。
デメリット
- 収入が不安定・・・時給もしくは日給制で給与が安定しない
- 収入が少ない・・・賞与、退職金がない
- 職責への不満・・・責任のある仕事を任されることが少ないが、これをメリット捉えることも少なくない。
- SSの仕事は扱っている派遣会社が極めて少ない事が実情。
アルバイト 契約社員/嘱託社員
定義
曜日、時間共に自由度を持って勤務
メリット
- 限定した就業時間・・・アルバイト最大のメリットは、働く日数と時間を決めることができ、プライベートの時間を確保できること。
- 仕事の掛け持ちができる・・・上記に関連して、自分の時間が取りやすいということは、様々な職種のバイトを掛け持ちすることも可能。
- 求人件数・・・正社員、契約社員と比べて、求人件数が多く、仕事を選べる。
デメリット
- 収入が不安定・・・時給もしくは日給制で給与が安定しない
- 収入が少ない・・・賞与、退職金がない
- 職責への不満・・・責任のある仕事を任されることが少ないが、これをメリット捉えることも少なくない。
派遣 契約社員/嘱託社員
定義
派遣会社と雇用契約、派遣先で就労
メリット
- 自分らしいスタイルで働くことができる・・・自分にマッチした勤務地、勤務時間・期間などの条件で仕事を選ぶことができるので、ライフスタイルに合わせて働くことが可能。
- キャリアを活かすことができる・・・派遣先での業務内容を詳しく知ることができるため、自分のキャリアやスキルを活かす仕事を選ぶことが可能。
デメリット
- 雇用が不安定・・・契約期間が終わる毎に、更新か契約終了となるかが決まるため。
- 収入が不安定・・・派遣社員の場合、基本的に時給計算となるため、祝祭日が多い月は月給の減少が。
- SSの仕事は扱っている派遣会社が極めて少ない事が実情。
正社員 契約社員/嘱託社員
定義
期間が定められていない雇用契約・フルタイム
メリット
- 雇用の安定・・・雇用期間が定められていないため、基本的に定年まで働くことができる。
- 賞与や退職金の支給・・・派遣社員には賞与や退職金がありませんが、正社員やその他非正規にはそれがあるケースが多い。
- 昇給、昇格の機会が多い・・・正社員は勤続年数に応じて昇給したり、昇格して役職がついたりするケースが多い。
デメリット
- 自分らしいライフスタイルで働けない場合がある・・・異動や転勤がある可能性や様々な仕事を任される確率が高く、自分の希望通りの仕事ができるとは限らない。
- 雇用される確率が低い・・・多くのSS事業者では非正規社員と比較して雇用に至る確率が低いのが実情。
- 時給換算すると低い・・・月給を時給換算すると非正規社員より低くなる場合も。
- 待遇差が無くなる?・・・現在国では「同一労働同一賃金」として正規雇用と非正規雇用との待遇差を無くすよう推進しています。そうした面から見ると正規雇用のメリットは少なくなっているようにも見えるでしょう。
労働条件
労働条件とは「賃金、労働時間、休暇など」労働者が働くうえで使用者と取り決めなくてはならない条件です。 これらを記載した「労働条件通知書」はすべての従業員に交付される取り決めとなっています。
「労働条件の通知」は雇用契約書にその内容を記載することをおススメしています。
労働条件の種類
労働契約期間
有 労働契約を更新する場合の基準
就業の場所及び従事すべき業務
始業及び終業の時刻
シフトを組む場合の入れ替わる時刻所定労働時間(SSの場合、週44時間)を超える労働の有無
有 時間外労働の上限時間
時間外労働に対する割増賃金
休憩時間、休日、休暇
賃金
賃金の決定、計算及び支払の方法
賃金の締切り及び支払の時期
昇給について
退職
退職手当が適用される労働者
退職手当の決定、計算及び支払の方法
退職手当の支払の時期について
退職や解雇の事由
臨時に支払われる賃金
賞与
精勤手当
勤続手当
奨励手当や能率手当
労働者が負担する費用
食費
作業用品
その他
その他諸条件
安全及び衛生について
職業訓練にについて
災害補償及び業務外の傷病扶助について
表彰及び制裁について
休職について
扶養の範囲で働くとは
労親族の扶養を受けることのメリットは税金の負担が減ったり、保険料を払わなくても保険に加入できたりするなどがあります。
しかし、扶養を受けている人が一定の年収額を越えてしまうと、扶養から外れてしまい、これらのメリットを受けられなくなってしまいます。そのためほとんどのパートタイマーの方々は扶養の範囲内で働くことをポイントとしています。
税法上の扶養範囲
税法上の扶養とは、扶養家族の給与年収が103万円以下である場合などに入ることができる扶養のことです。税法上の扶養に入ると、所得税や住民税の負担が軽減されます。
もし給与年収が103万円を超えるなどして扶養を外れると被扶養者ではなくなるため、規定通りの納税が必要となります。
健康保険上の扶養範囲
社会保険上の扶養とは、自分で保険料を支払わなくても保険に加入できる仕組みのことです。
健康保険と厚生年金保険により収入の範囲(条件)が異なります。
健康保険
年収 | 世帯 | 収入条件 |
---|---|---|
130万円未満(※1) | 同一 | 被保険者の年収の2分の1未満 |
同一以外 | 被保険者からの援助による収入額より少ないこと |
※1:対象者が60歳以上もしくは障害厚生年金を受けている障害者の場合は180万円未満
厚生年金保険
年収 | 収入条件 |
---|---|
130万円未満 | 第3号被保険者(※2) |
180万円未満 | 60歳以上、障害厚生年金を受けている 同居の場合は、収入が扶養者の収入の半分未満 |
※2:被保険者の分類
被保険者 | 対象者 | 保険料納付 |
---|---|---|
第1号 | 自営業者、農業者とその家族、学生、無職の方など | 被保険者本人、保険料連帯納付義務者である世帯主または配偶者が納付 |
第2号 | 民間会社員や公務員など厚生年金保険の加入者 | 毎月の給与と賞与に保険料率をかけて計算された額を、事業主と被保険者が半分ずつ納付 |
第13号 | 第2号被保険者に扶養されている配偶者 | 自己負担なし |
収入区分一覧表
収入額 | 税制上の扶養 | 社会保険上の扶養 |
---|---|---|
100万 | 住民税が発生(自治体による) | |
103万 | 所得税が発生 配偶者控除の上限 | |
106万 | 勤務先の保険加入義務発生(※3) | |
130万 | 社会保険の扶養上限(※3) | |
150万 | 配偶者特別控除の満額(38万円)控除 | |
201万 | 配偶者特別控除対象外 |
※3:収入以外の諸条件(従業員数、勤務日数、勤務時間など)により決定
トラブル対処
ありがちなトラブル
賃金が求人内容と異なる
決め手となるのは「労働条件通知書」や「雇用契約書」
ハラスメント
ここ数年ハラスメントが大きな話題となっています。一般的には35種類にも及ぶと言われています。ここでは代表的な事例を学んでいきましょう。
セクシャルハラスメント
職場におけるセクシャルハラスメントの定義や類型(パターン)は、動画の中で解説していますのでご覧ください。
【定義】
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることで、同性に対するものも含まれます。
【類型】
(1)対価型
性的な言動に対して労働者が拒否や抵抗を示したことを受け、その労働者が解雇、降格、減給など、労働条件において不利益を受けること
(2)環境型
性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること
パワーハラスメント
職場におけるパワーハラスメントの定義や類型(パターン)は、動画の中で解説していますのでご覧ください。
【定義】
・優越的な関係を背景とした言動
・業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
・労働者の就業環境が害されるもの
以上3つの要素を全て満たすものをいいます。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。この点についても、動画の中でもこの点について解説されています。
【類型】
・身体的な攻撃蹴る、殴る、物を投げつけるなど
・精神的な攻撃脅迫するような言動や人格を否定するような侮辱(性的指向・性自認に関する侮辱的な言動も含む)、名誉棄損に当たる言葉、ひどい暴言
・人間関係からの切り離し仕事から外す、別室への隔離・無視や仲間外しなど
・過大な要求業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
・過小な要求業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないこと
・個の侵害職場外での継続的は監視やライバシーに関する情報について、本人の了解を得ずに、他の労働者に暴露すること
マタニティハラスメント
妊娠や出産に関するハラスメントは一般的に「マタニティハラスメント」と称されていますが、関連する男女雇用機会均等法では育児介護休業法として扱われますので、ここでは介護を含めた解説いたします。動画ではマタニティハラスメントについて解説していますのでご覧ください。
【定義】
妊娠・出産・子育・介護に対して嫌がらせを受けることで、女性、男性問わずそのハラスメントの対象となります。これらは法律で禁止されており、企業にはその防止措置が義務付けられています。
【類型】
(1)制度等の利用への嫌がらせ型
産前休業、育児や介護休業などの制度や措置の利用に関する言動により就業環境が害されるもの
(2)状態への嫌がらせ型妊娠したこと、出産したことなどに関する言動により就業環境が害されるもの
仕事中の怪我
労災の時どうする
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000150202.pdf
ノルマを強要された
ノルマとは「達成しなくてはならない目標」という意味で用いられることが一般的になっています。
「目標を設定すること」自体は非正規雇用の社員を対象としたものであっても認められています。
しかし、「達成しなくてはならない」が「達成しなかったら罰金などを科す」となると法律に違反しています。罰金には、商品であれば「売れ残りを買い取らせる」ことや「目標に対する不足分などを給料天引きにする」などが当てはまります。
また、通常の業務内では明らかに達成困難なノルマを課された場合は、パワハラにあたる可能性があります。ノルマ達成まで残業をさせることも違法行為です。
このようなことに遭ってしまった場合は、こうした指示をした上司のさらに上司に相談する、労働基準監督署に相談するようにします。
仕事を辞めたい時どうすれば良いの?
仕事を辞めたい理由は様々です。「お金」、「人間関係」、「仕事内容」、「労働時間」あるいは「今は働きたくない」ということもあるでしょう。
しかし、何かの縁があって働くようになった会社です。また直属の上司や職場の仲間の手前、言い出し難い場合や、もう顔を会わせるのもいやだということもあるかと思いますが、予告もせず、いきなり会社に行かなくなるというのはルール違反です。
退職の意思を上司に伝え、書面で届け出る、仕事の引き継ぎをするなど社会的ルールを守って辞めることが大切です。
注意点は法律上、正規、非正規によりルールが異なるということです。
正規雇用(契約期間の定めがない場合)
正社員など契約期間に定めが無い場合は、まずは、会社の就業規則に退職手続きが定められているかを確認します。もしそれが決められている場合はそれに従って退職の申し出をする必要があります。
次にそうした会社としても定めがない場合、少なくとも2週間前までに退職届を提出するなど退職の申し出をすれば、法律上はいつでも辞めることができます。
期間の定めがある場合
「非正規雇用」の場合、その就労期間が決められています。しかしその期間が満了する前に、やむを得ない理由があればすぐに退職することができます。
退職した際の失業保険と健康保険・年金の手続
失業保険
失業保険受給の条件(ここにある3つの条件すべてが当てはまること)
「失業状態」であること
雇用保険の制度として、「失業状態」すなわち「働く意思と能力があり、積極的に仕事に就くための活動をしていながら、現在仕事に就くことができない状態」の方々は、「失業給付金」、「失業手当」と呼ばれる「基本手当」を受けることが出来ます。
ですから、家業に専念することになった、家業や家事の手伝いをする、学業に専念することになった、すでに転職先が決まっている、自営業を始める(準備を含む)などの場合は該当しません。一定期間、雇用保険に加入実績があること
退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12カ月以上あることが条件になります。この場合賃金支払いの対象となる日数(勤務日数)が11日以上あれば1か月とカウントされます。
ただし、「特定受給資格者」や「特定理由離職者(※)」は、退職日以前の1年間に、雇用保険に加入していた月が、通算して6カ月以上ある場合も対象となります。※「特定受給資格者」とは倒産、リストラ、解雇などによって失業した人、「特定理由離職者」とは契約更新を希望したのに更新されずに期間満了となった人や、病気、出産、配偶者の転勤などの理由で失業した人を言います。
ハローワークに求職の申し込みをしていること
ハローワークにある「求職票」に氏名や住所、経歴や就職の希望条件などを記入し、提出することで求職の申し込みを行います。
失業保険受給の手続き
「会社都合による退職・正当な理由のある自己都合による退職」と「自己都合による退職」によって給付される期間が異なるため給付される金額も変わってきますので要確認です。
「会社都合による退職・正当な理由のある自己都合による 退職」なのか「自己都合による退職」なのかの判断
「会社都合による退職」
解雇や退職勧奨など会社側の都合により退職する場合を言います。また、早期退職者募集に労働者が自ら応募した場合も基本的には会社都合です。「正当な理由のある自己都合による退職」
正当な理由とは以下の場合を指します。- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力、聴力、触覚の減退による離職。
- 妊娠、出産、育児により離職し、雇用保険の受給延長措置を受けた者
- 父母の死亡、疾病、負傷又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病等による離職
- 配偶者や扶養親族と別居を続けることが困難となった者
次の理由により通勤が困難となった者
- 結婚に伴う住所の変更
- 育児に伴う保育園等への保育の依頼
- 事業所の通勤困難な地への移転
- 自己の意に反する住所移転
- 鉄道、軌道、バス、その他の運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
- 本人又は配偶者の事業主の命による転勤や出向に伴う別居の回避
重要:以上を証明できる書類が必要となります。
「自己都合による退職」
上記1以外の理由によるもの
